似顔絵ひとつ。

   絵描。

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一つの夏の昼下がり、とある街の木陰で。

私は、ある絵描きに、絵を描いてもらいました。
似顔絵をひとつ。

絵描きは、キャンバスとブラシ、そして数日分の食料をだけを持って旅をしていました。
絵を描きながら旅を続け、もう長いことそうして暮らしているとのことでした。
土砂降りに打たれて描いた絵が台無しになったことや、野良犬にキャンバスを破かれてしまったこともあったかな?と、絵描きは話しました。
困ったり怒ったりするはずのそんな出来事を、なぜか楽しそうに話していました。

「旅をしなくても、絵は描けるんじゃないですか?」
そう尋ねた私に、絵描きは、曰く言い難い微笑みを向け、こう言いました。
「旅は良い。この足でこの世界を周り、この手でその世界を描く。私の手が素敵な絵を描けるように、この足は私を運ぶのさ」
そう言って、絵の具で汚れた手で擦る絵描きのズボンは、お世辞にも綺麗とは言えない状態でした。
私は少し心配になり、絵描きに尋ねました。

「失礼ですが、ちゃんとご飯、食べていますか?」
今思えば、かなり失礼だったとは思いますが、当時の私は心配のあまり、そう聞きました。
すると絵描きは一瞬きょとんと驚いたような顔をした後に、にっこり笑ってこう応えました。

「お気遣いありがとう。大丈夫だよ。何も食べるものが無いときは、そうだな・・・。絵の具を濾して食料にしているのさ」
今度は私が驚く番でした。
「はは、冗談さ」
半分、冗談には聞こえませんでした。

その後私は、絵描きの今までの旅の話を聞かせてもらいました。
岩のようにゴツゴツした熊に襲われた話。火を吐く龍に追いかけられた話。雪国で猛獣の夫婦に睨まれた話。。。
どれも素敵で引き込まれるようなお話でしたが、その時は、ちょっと信じられませんでした。
でも絵描きのそのお話は、今なら信じられます。
そしてしばしの歓談の後、私と絵描きは別れました。

別れ際、絵描きは私に言いました。
「キミの・・・。キミを描いたこの絵が、どこかの国の誰かに見てもらえる日が来るといいな」
「その日がきっとやって来ると、私も信じています」
「そうだといいな。あぁ、でももし誰かに見てもらえたとしても、遠い遠い、名前も知らない国の人だったら、見てもらえたことがわからないか」
絵描きはそう言って苦笑しました。

「その時は・・・私がそれを伝えに来ます。私を描いてくれたこの絵が、どこの誰に見てもらえたのかを」
「おお、それはありがたいねぇ」

それが、私と絵描きがこの日に交わした最後の会話でした。
その後、この絵描きが何処で何をしているのか、誰一人として行方を知る人はいません。
誰に尋ねても、首を横に振るだけでした。

でも私は、この絵描きがどこかの国の道端で、きっと素敵な絵を描いていると信じています。
そしてきっと、私からの報告を心待ちにしているんです。

私は、世界を自由に旅し、あの絵描きにまた会いに行く。
そのために私はアークスになったのだから。

おめでとうを伝えるために。
ありがとうを伝えるために。

 

一つの夏の昼下がり、とある街の木陰で。

今日も私は、絵描きを探す。

 


※この物語はものすごくフィクションです。


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2015-01-27 | Posted in Story4 Comments » 

コメント4件

 ゆき子 | 2015.01.28 9:57

彼とは、はるか昔に山頂のキャンプで一度だけ夜を共にしました。
彼の作る質素な食事は何故か美味しかった。

なんてことない非常食のようなものなのに、彼の語りを聞いていると、
その情景を、まるで先ほどの出来事かのような鮮明さで感じられ、今までにない感動が胸に沁み、そして込み上げてくる熱い想い。
久しくこんな感情を忘れていました。

その感じた感動を皆と共有したいと思い、もっと表現していくべきだと言いました。

その時隣で一緒に語りを聞いていたガタイの良いおっさんはガハハ!
と笑いながら彼の背中を叩き、彼にこう言った。
「お前さんは絵を描け!きっと人に響くいい絵を描くだろう。歌もいいが絵なら感動を次の世代まで色あせずに伝えられる!」

彼は「それは良いかもしれませんね、良きアイディアをありがとう」と言って私たちの似顔絵を描いてくれました。
この絵を見ると今でもあの夜の温かい火の光を鮮明に思い出します。

 ルイナ | 2015.01.29 0:48

ゆき子さん。
とっても素敵な詩・・・・!!
満天の星空の下で、時間も忘れて旅の話しを語り合っている光景が目に浮かびます(*´ڡ`●)

p.s.この詩をコラボさせてもらいますね♪本当に素敵な詩で、SSの編集も楽しみです(๑╹ڡ╹๑)

 ルル | 2015.01.29 17:48

おじさん!その似顔絵言い値で買いましょう!(ぇ

 ルイナ | 2015.01.29 18:45

ルルさん。

おじさん「ほほぉ。チムメンのよしみで特別に安くしておくよ。500000000メセタでどうかね?お安いだろう?(ゲス顔」

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